ＩＦ…
もしも皆と親密度100だったら
〜女主人公ver〜
（※実際にはありえません）

　それは冒険者の集まる、コロナの街でのお話。

　…赤い竜を倒した英雄が、
　街を旅立つ、少し前の物語…。

＜魔法学院＞

アルター：
おい、マーロ！
聞いたか！？

マーロ：
…なんだよアルター、朝から騒々しいな。
おれ、忙しいんだけど。

アルター：
そういう場合じゃないだろ！
あいつがこの街、
出てっちまうって言うのに！

マーロ：
…なんだ、その話か。
その話なら、もう聞いたよ。

アルター：
聞いたって…。
おまえはそれで平気なのか？

マーロ：
平気も何も、
騒ぐほどのことじゃないだろう。

そもそも冒険者なんだから、
いつ拠点を変えたって不思議じゃないさ。

アルター：
………。
そりゃ、そうかもしれねえけど…。
それにしたって…。

せっかく厄介な呪いも解けて、
これからはこの街で
楽しくやれるって思ってたんだぜ。

それなのに…。

マーロ：
…呪いが解けたから、だろ。

「呪いが解けて、記憶を取り戻したからこそ、
やらなきゃいけないことも思い出した。
だから、この街を出て行く」

…一度そう決めたからには、
誰がなんと言おうと、考えを変えない。
あいつは、そういうやつだろ？

アルター：
…なんでおまえ、そんなに冷静なんだ？
行っちまうんだぜ、あいつが。

マーロ：
…おれはもう、決めたからな。

アルター：
…なにをだよ。

マーロ：
…さあな。
自分で考えな。

さ、話が終わったなら
出てってくれないか。
おれは忙しいんだ。

…荷造りの準備で。

アルター：
！

マーロ、まさかおまえ…

自分だけ、あいつについてく気か！？
ずるいじゃねーか！

マーロ：
ずるいも何も、おれが自分でそう決めただけだ。
悔しがるのはお門違いだろ。

じゃ、アルター。
…元気でな。

(学園から外に出されるアルター)

アルター：
…マーロのやつ…なにが
元気でな
だ！

こうなったら、オレも
絶対ついていってやる！
ちくしょう、負けるもんか！
待ってろよ！

＜広場＞

ルー：
はぁ…。

カリン：
…まあ、ルー、
どうかなされたんですか？
お元気が、ないようですけど…。

ルー：
…カリン。
うん、ちょっと…。

カリン：
…あの…もしかして…ルーも、
お聞きになったんですか？
あの方が旅立つってこと…。

ルー：
…カリンも？

カリン：
…はい。

ルー：
…そっか…。

寂しく、なっちゃうよね。
せっかく、何でも話せる親友ができた…って
思ったのに。

カリン：
…ええ。私も…

冒険があんなに楽しいものだって、
あの方のおかげでわかったのに…。

街を出て行ってしまわれるなんて…、
本当に残念です。

(リュッタ登場)

リュッタ：
あれ？ルー、カリン！
どうしたの？

すーっごく暗い顔してさ。
なにかあったのかい？

ルー：
リュッタ。

…うん、彼女が街を出て行くって
聞いたから……。

カリン：
…リュッタも、残念でしょう？

リュッタも、
あの方とよく一緒に遊んでいましたし…。

リュッタ：
なーんだ、そのことか。
それなら、おいらは平気だよ。

だっておいら、一緒についてくもん。

ルー：
えっ？そうなの！？

カリン：
まあ、リュッタ、そうなんですか！？

リュッタ：
うん！
だっておいら、彼女と一緒にいると
すっごく楽しいんだもん！

だから誰になんと言われようと、
彼女の行くところなら
どこだって一緒について行くんだ！

ルーもカリンも、
そうすればいいじゃないか！
みんな一緒だったら、きっと楽しいよ？

カリン：
そ、そうでしょうか…。

ルー：
で、でも…迷惑じゃないかな？
彼女にだって都合もあるし…。

(ミーユ登場)

ミーユ：
本当にそうでしょうか？

カリン：
まあ、ミーユ。

リュッタ：
わーい、ミーユだ！
こんにちは！

ミーユ：
こんにちは、リュッタ。

ところで、お二人とも。
先ほどからお話を聞かせていただきましたが…
ずいぶん、悩んでおいでのようですね。

ルー：
え、ええ、まあ…。

カリン：
そうです…けれど…。

ミーユ：
ああ、そのように落ち込む必要はありません。
私も、その気持ちはよくわかりますよ。

友情の、人同士の絆の形は、
人によってそれぞれ違いますから。

何があっても一緒にいるのも、
信じているからこそ、遠くから見守るのも、
それぞれ、正しい形でしょう。

けれど、一つだけ言えることは…、
自分の気持ちを偽って出す結論は、
誰のためにもなりませんよ。

あなた方自身のためにも、
そして、それだけあなた方と心をよせている
彼女のためにも、ね。

カリン：
ミーユ…。

ミーユ：
…私の言いたいことはそれだけです。
それでは、失礼しますね。

(ミーユ去る)

リュッタ：
…行っちゃった。

ルー：
…あたしの、気持ちか…。

…うん！

カリン：
まあ、ルー、どちらへ？

ルー：
ちょっと、よく考えてみる！
それじゃ、カリン、リュッタ、
またね！

(ルー・走り去る)

リュッタ：
ルー…
走ってっちゃった。

カリン：
そうですね。
私の気持ち…。

…ごめんなさい、リュッタ。
私もそろそろ行きますね。

リュッタ：
えー？そうなの？

カリン：
はい、もうしわけありませんが…、

私も、しなければいけないことが
何となくわかりましたから。

ごめんなさい、失礼しますね。

(カリン・去る)

リュッタ：
…みんな行っちゃった。

でも、二人とも元気になったみたいだから、
まあいっか！

よーし、おいらも、
何か、楽しいこと探しに行こうっと！

＜鍛冶屋＞

シェリク：
失礼いたします。
本日、こちらに届くはずの防具を
受け取りに来たのですが…。

デューイ：
あ…申し訳ありません。
今、ロッドさんは
外出中のようでして…。

…と、これは、シェリクさん。

珍しいですね、シェリクさんが
こちらにいらっしゃるなんて。

シェリク：
おや、これはデューイさん。

ええ、本日はいつもの方が
お休みを取っていましたもので、
私が代わりに…。

デューイさんは、武器の手入れですか？

デューイ：
ええ。この槍も、魔物との戦いで
随分いたみましたから…。

シェリク：
そうなのですか…。

デューイ：
ええ………。

シェリク：
………。

デューイ：
………。

(ロッド登場)

ロッド：
なんだお前ら。

昼間っから男二人がガン首そろえて
シケたツラしやがって…
営業妨害でもしに来たのか？

デューイ：
ロ、ロッドさん！
い、いえ、
決してそういうわけでは…。

シェリク：
も、ももちろんです！
神に誓ってそのようなことはありません！

ロッド：
…そんなに本気で弁解しなくてもいいっての。
まったく、相変わらずクソ真面目で
冗談の通じねえコンビだぜ。

お前らもアレか？
アイツが旅立つってんでショックうけて
暗くなってるクチか？

デューイ：
ロッドさん、そのような話をどこで…！

ロッド：
どこもなにも、当人からも聞いたし、
今やコロナ中、この話でもちきりだよ。
「赤い竜を倒した英雄が行っちまうー」ってな。

おかげでアルターは町中走り回って騒いでるし、
ルーやカリンも広場で暗い顔してるし、

町のやつらも、祝うヤツとヤケになるヤツ、
どっちも飲まずにいられるかってんで
酒がバカバカ売れるもんだから、

いつもの酒を買ってくるのに
こんなに時間がかかっちまった。

まったく…街一つ出てくだけでこの騒ぎとは…
英雄ってのも罪なもんだな。

シェリク：
…それは、仕方ありませんよ。
もともと彼女は町の人々に慕われていましたし、
その上あの、恐ろしい赤い竜を倒したんですから。

ロッド：
まあ、それはオレもわからないわけじゃないが…。

…それにしても、本当に赤い竜を倒すなんてな。
この目で見ていたとはいえ、
未だに時々信じられなくなるぜ。

アイツのどこにそんな力が…ってな。

姿だけ見てると、どこにでもいる…
むしろどこか頼りなさそうな顔をした、
普通の女なのによ。

デューイ：
そうですよね！
そう見えますよね！

シェリク：
デューイさんもそう思ってたんですか？
実は私もなんです！
奇遇ですね！

ロッド：
な、なんだ、突然…。

デューイ：
確かに彼女は素晴らしい力を持っています。
けれどその実、その心はガラス細工のように
透明で繊細で…。

シェリク：
ええ、人を疑うことを知らない、
まっすぐで優しい心の持ち主です。

デューイ：
でもだからこそ、彼女のことが心配なんです。
広い世界には、彼女を騙そうと待ち構えてる輩や、

その名を目当てに彼女を倒そうとする…
そんな者がいないとも限らない。

シェリク：
…神の言葉に耳を傾けない、
そんな悪に染まりきったものが
彼女を利用して、つらい目にあったらと思うと…。

…やはり、頼れる者がすぐそばで守るべき…。
それが神の意にもそうことになるはず…。

デューイ：
ええ、常にそばで彼女を守る、騎士が必要に…。

シェリク：
…こうしてはいられません。
ロッドさん、失礼いたします！

デューイ：
私も失礼します、ロッドさん。
お邪魔いたしました！

(シェリク・デューイ・退場)

ロッド：
あいつら…。
オレに用があって
店にいたんじゃなかったのか…？

まったく…
本当に英雄ってのも罪というか…。

…しかたねえな。
オレもあいつらに負けないよう、
準備の一つもしますかね。

＜研究所＞

レティル：
お邪魔しまーす。誰かいます？
…いないわね。
よかった、これでゆっくりできるわ。

レラ：
何を勝手に決めているのかしら？

レティル：
ああレラ！
いたの？

レラ：
さっきからずっといたけれど？

それにしても珍しいわね。
あなたが研究所に来るなんて。

レティル：
ええ、ちょっとね。
街にも酒場にも、居づらくて。

レラ：
それで街で一番人気のない
ここに来た…ってわけね。

レティル：
別にそんなつもりは…。

レラ：
いいわよ、弁解なんて。
ゆっくりしていったら？
何のお構いもできないけど。

レティル：
…ねえ、レラ。
あなたは聞いたの？
あの話。

レラ：
彼女の話？
ええ、それなら、少し前に。

レティル：
そう、聞いたの…。
…寂しくならない？

レラ：
いいえ、別に。

レティル：
あら、そうなの？
レラも、彼女と随分仲良くしてたように
見えてたけど？

レラ：
…まあ…、確かに
大事な資料を失うのは痛いけれど…

いつかはこうなることは、
はじめからわかっていたことだもの。

私に言わせれば、
ずっと前からわかっていたことに、
こんなに騒ぐことの方が不思議だわ。

レティル：
…そっか。
レラは、そうなのね。

レラ：
それより、あなたも街を出て行くって聞いたけど？

レティル：
ええ。
あたしは、もともとこの街の住民じゃないし、
レオンのことも決着がついたから。

彼女と一緒に旅立つつもりよ。
その後のことは…
今はまだ、わからないけど。

レラ：
なるほど、それで街で
質問責めにあって、ここに来たのね。
まったく、大変ね。

…ああ、ごめんなさい。
私、少し席をはずすけど、
好きなだけここにいていいわよ。

出て行く時も勝手に出て行って。
鍵も、そのままで構わないから。

レティル：
ええ、ありがとう。レラ。

(レラ・去る)

レティル：
…それにしても、レラ…。

どうして大事な研究書を
まとめて
紐でくくってなんかいるのかしら？

…引越しでも、するつもり…？

＜森＞

ユーン：
…ラケル、こんなところにいたの？

ラケル：
ユーン…。

ユーン：
彼女がすごく心配してたわよ。
怒って家を出てっちゃったって。

ラケル：
………。

ユーン：
…まだ、怒ってるの？
彼女が旅に出ちゃうこと。

ラケル：
…別に。

ユーン：
じゃあなんでそんな顔してるのよ。
怒ってるんじゃないの？

ラケル：
違うよっ。
ただ…。

ユーン：
ただ？

ラケル：
…泣きそうになった…から。
だから…そんな顔、見られたくなくて…。

ユーン：
………。

……そっか。

ラケル：
………。

ユーン：
…寂しいよね。
せっかく、友達になれたんだもんね。

ラケル：
………うん。
ユーンも？

ユーン：
…うん。わたしも…寂しい。

彼女と仲良くなって…人間の中にも
信じられる人がいるって
思い始めたところだったのに…。

それなのに…もう行っちゃうなんて。
…ちょっと、勝手よね。

ラケル：
…そう…そうだよね。

言いたいことだけ言って、
やりたいことだけやって、

それが済んだらサヨナラ、なんて
そんなの…勝手だよ。

ユーン：
…そうよね。
これだから人間なんて、
信じられないのよね。

ラケル：
うん、人間なんて…
まだ、信じられないよ。

ユーン：
…ねえ、ラケル。

ラケル：
なに？

ユーン：
まだ信じられないからこそ…
今のままサヨナラ、
なんてできないと思わない？

ラケル：
…ユーン？

ユーン：
まだまだ、わたしたち人間のこと、
ちゃんと知らないし、
信じられないんだもの。

だからこそ…わたしたちに一番近い人間の
彼女には、最後までわたしたちにつきあってもらう
義務があると思うんだけど。

ラケル：
ユーン、それって…。

ユーン：
あくまで一つの案として、だけどね。

ラケル：
………。

ユーン：
ラケル、今日はそろそろ帰らない？
あんまり遅くなると、お母さんが心配するわよ。
それに…。

ラケル：
それに？

ユーン：
彼女、心配だから明日もまた来るって。

それなのに、目がはれてたり、
風邪で寝込んで会えなかったりしたら、
ラケルが恥ずかしいんじゃない？

ラケル：
………そっか、明日も……。

…うん、わかった。今日はもう帰る。
帰って…少し考えてみるよ。

ユーン：
そう、よかった。

(ラケル・去る)

ユーン：
ラケル…少し、元気になったみたいね。
よかった。

…旅立ち、か。
…わたしも、本気で考えてみようかな。
今までのことと、これからのこと…。

そして、コロナの英雄が街を旅立つその日…。

彼女の後を追ってくる、人影がありました。

それは冒険で出会った、大事な仲間たち、そしてその家族や友人、更にその身内や仕事仲間、さらにそのファンやペットたちでした。

…こうして、歴史上かつてない、１つの街を引き連れた英雄の旅立ちは、後々まで語り継がれ、世界中の人々の心に、強く残ることになったのでした…。

（以下コメントにつき薄字。読みたい方はマウスでドラッグしてください。）

　書いた動機は一言で言うとちょっとした冗談だったり。

　実際のゲーム中では、誰かの親密度が100になると、自動的に他の100だった人の親密度が99に下がってしまうので、こういう仲間同士で取り合いとかになる事態はありえないんですが、もし全員100でみんなが追いかけてきたらそれはそれで面白いかも……と思って書いてしまいました。

　いつものことですがイメージ先行で書いてるので、設定と微妙に違ったらすみません。

　ルーがついてくるときに、やっぱりルビィやマノンもこっそり一緒だといいなー、なんて考えたりしたので、その願望も込めてたり。……実際街ごと移動したら主人公が困るんですけどね。