眠り姫
夢を、見てた。
ずっと、ずっと――あなたの、夢を。
神竜様の鏡が割れて、城のみんなと一緒に、呪いをうけて……かえるになって。
私は何なのか、何故ここにいるのか、そんなこともわからないまま、ただ城の中で、ぼんやりと時間を過ごした。
そして夜が来て、疲れて眠って。
……いつも、同じ夢を見たの。
夢の中の私。
元の姿の……人間の、私。
私は退屈が、部屋にじっとしているのが大嫌い。
だから机に向かって勉強なんてとんでもない。
それでいつも、人の目を盗んでは、部屋を抜け出して。
何かないかな、面白いことはどこかなって城を探検してる時に……あの話を、聞いてしまった。
叔父様の……大臣の、陰謀を。
王であるお父様が、留守をしているこの隙を狙い、国の宝であり、神竜様の力の宿ったあの鏡を奪い、この国を滅ぼして、自分が王となると言う……恐ろしい、はかりごと。
私は驚いて、みんなに話そうとしたけど……誰も、私の話を信じてくれない。
……今思えば、いつもいたずらばかりしてた上、部屋を抜け出すためにウソをついたばかりだったから、無理もないことなんだけど。
でも、そんなことは考えられなくて、どうにかしなきゃ、誰か助けて……そんな気持ちで頭がいっぱいだったときに現れたのが――あなただった。
突然私の前に現れたあなたは、疑いもせず私の話を聞いてくれて。
私を手伝って欲しい、この城が大変なことになる前に、どうか一緒に鏡を守って欲しい……そんな頼みも、快く引き受けてくれた。
……思い返してみれば、本当に、むちゃくちゃだったと思うわ。
初対面の相手に、この国の一大事を救って欲しい、そう、頼んだのだもの。
それでもあなたは、私を助けてくれた。
勝手のわからない城の中で、一生懸命になって。
困ってる人がいれば声をかけて、なくしたものがあったら探し当てて。
いつも優しくて、私のしたことまでも、自分のことみたいに謝ってくれて。
……そんなあなたが、かっこいいなって、思えて……好きだって、思った。
けれど、目が覚めると私、何も覚えてなくて。
結局鏡を守りきれなかったことも、そのせいで自分が、あなたがかえるになったことも……思い出せなくて。
ただただ、何も思うことなく、ぼんやりと時間を過ごした。
あまりにぼんやりとしすぎて、あなたがいなくなった時にさえ、気づくのに時間がかかって。
気づいた時でさえ、その重みも……わからなかった。
ああ、いなくなったんだ。
その認識すら、あまりに軽くて。
胸の中の空白感、自分の中のその感覚すら、わからなくて。
繰り返す夢の中でだけ、胸の痛みを感じた。
けれどある日、いつもの夢が……変わったの。
いつものように夢を見て……あなたが、出てきて。
けれどその姿は、いつもと少し、違ってた。
あなたは、足が、背が伸びていて……大きく、成長していて。
そして、見たことのない街の中で、あなたは生きていた。
街中を動き回り、多くの人と、生き物と話をして。
体を鍛えて、技術を磨いて。
そして仲間と共に、新しい場所に冒険に出た。
どうしてあなたがその街にいるのか、何のために冒険をしているのか、それはわからなかったけど。
それでもあなたは、一生懸命で、優しくて……困ってる人がいれば、迷わず手を貸して。
そこは、何も変わってなくて。
それがとても、嬉しくて。
……すごく、まぶしかった。
だから、思ったの。
私は、あなたが好きだって。
あなたのそばで、ずっといたいって。
そのまぶしさの、笑顔のそばで、時間を過ごしたいって。
……だから、人の姿に戻った時、あなたが鏡を元に戻して、呪いを解いてくれた時は、本当に嬉しくて、仕方なくて。
ただ会いたくて、そばに行きたくて、あなたのところへ走った。
あなたのそばにいたかった。
あなたがいる空間に、一秒でも長く……いたかったの。
……不思議ね。
呪いにかかっていた間の、かえるとしてすごした時間のことは、ほとんど思い出せないのに。
なのに夢のことは、はっきりと覚えてる。
まるで夢の中の出来事の方が、私にとっては現実だったみたいで。
……だから、言うわ。
これから何が起こるとしても、あなたがどこへ行くとしても。
……あなたのそばにいたいって。
今度こそ、はなれたくない。
あなたのそばで、ずっといっしょにいたいんだって。
あなたに、気持ちを伝えたい。
……たとえ、結果がどうであっても。
もう、何もわからないまま、何もしないまま、あなたを失うのは……イヤだから。
あなたが、好きよ。
大好き。
私の……たった一人の、王子様。
―――Fin
（以下コメントにつき薄字・見たい方はマウスでドラッグしてください。）
白竜ルート、セルディア→男主ネタです。
……こういう独白・ほぼ恋愛オンリーネタだとコメントも難しいですね。なんかちょっと照れるというか。
お付き合い、どうもありがとうございました。
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