囚われのパルマ

評価…Ｄ

あらすじ

　ある事件のため、しばらく都会から離れた島に住むことになった主人公。島の施設にいる、その事件に深くかかわる男性の記憶を取り戻すよう、頼まれた主人公だったが……。

長所

グラフィックが全体に綺麗。
システムがいろいろ凝っていて、主人公や攻略キャラに感情移入しやすいようできている。
メイン攻略キャラの声優さんファンの場合、たくさん声が聞ける。

短所

シナリオに一部、雑な部分がある。
基本のシステムと、マルチエンディングやシナリオなど、システムがうまくかみ合ってない……と思う部分がある。
夢アプリなど、好みが大きく分かれそうな要素がある。

コメント

　主人公に自己投影する派にすごくやさしい、没入感がすごい、などと聞いて興味があったところに、ＳＷＩＴＣＨ版のダウンロード版半額セールを聞き、デラックスエディションを購入。元はスマホ向けアプリで、ＳＷＩＴＣＨ版はハルト編とアオイ編の二本がプレイできます。

　システムというか進行はシナリオアドベンチャーな感じ。オープニングシナリオを読み、攻略キャラと面会。面会が終わると「攻略キャラを監視」や「島を散策」、「攻略キャラに差し入れ」、「攻略キャラにメッセージを送る」……などができるようになります。グラフィックは基本2D、攻略キャラのみ3Dとイベントスチルあり。背景・キャラ含めグラフィックは2D・3Dすべて綺麗です。

　基本は「散策」→島マップのアイコンから「喫茶店」「農園」など、行く場所を選ぶと、主人公がそこへ移動。島のキャラに会って話したり、主人公が自動で行動することで「話題」や「アイテム」をゲット。また「監視」から攻略キャラの様子を見ることでも、同様に話題・アイテムをゲットすることがあり、とにかくゲットした「話題」を「メッセージ」から送って、攻略キャラとやりとりをしたり、夜になったら「アイテム」を差し入れしたりしながら攻略キャラと交流を深め、ターンこと島での時間を過ごすうちに、新たな「面会」ができるようになり……基本、その「面会」がメインシナリオとして、ストーリーが進んでいきます。ちなみにアプリ版では120円の課金要素だったサブシナリオこと「面会延長」は、デラックスエディションなどでもない通常版でも無料・無制限でできるようになってます。

　また、例えば散策中「公園」にいたキャラに「料理はできるの？」と聞かれ、選択肢で「得意だよ」と答えつつ「料理の話題」をゲットすると。……後に攻略キャラに「公園で料理の話をしたよ」などとメッセージ送ったときに「料理はできる方なの？」「うん、得意な方だよ」と、話題をゲットしたときの選択肢が、主人公側のセリフに反映されていたり。さらにその後、別の話題として「図書館で本を読んだの、料理の基礎がたくさんのってたよ」などとメッセージを送ると「あれ、料理得意なのに基礎の本読んでたの？」「ああ、１から改めて勉強してるんだ、えらいな」など、ずっと前の選択肢の情報が残って反映されてたりして、システムが細かいな、凝ってるなーと感心しました。

　ただ、そうやって主人公に自己投影なり感情移入させるための基本システムはいいなと思ったものの。夢アプリや、差し入れに「パンツ」など、自分にはちょっとあわないな……と思う部分があったり。それは個人の好みの問題としても、一番肝心……と思ってるメインシナリオで「え、これは自己投影を推奨するならNGでは……？」などと思うことがしばしばありました。

　たとえばハルト編、オープニングから急に、主人公がポエムのような文面で過去の夢を見るところから始まった……と思ったら、その夢ことプレイヤー的には無関係な過去が、メインシナリオに大きく関わってきたり。また、主人公が別のキャラにハルトのことを聞き、それをハルトに伝える……という流れだったのに、こっちが聞いたことというか別のキャラのセリフと、主人公がハルトに伝えてることが違う、違わないにしてもよほど深読み通りこして飛躍しないとあの別キャラの話からその内容は読み取れない、え、プレイヤーの知らないところで話してたの？それは自己投影推奨なら、それこそ絶対やっちゃいけないことじゃ？……などと思うシーンがあったり。

　また、アオイ編では、少なくとも私はあまり興味がないしこれだけで地雷の人もいるんじゃ、と思うアオイの元カノの話が長い気がしたり、ストーリーに必要とはいえ、素直な気持ちなら私はどれも選びたくない選択肢があったり、さらに、矛盾としか言いようのない箇所が複数。

　一番ひどいと思ったのはクライマックスなのに「選択肢は二つしかないのに、どっちを選んでも全体の話のつじつまがあわない」シーン。……自己投影とか好み以前に「え、そんなこと言ってた……？似たようなことは言ってたけど……ううーん……」と、せっかく盛り上がろうとしたのに、気が散って全然盛り上がれませんでした。（※リプレイしてもう一つの選択肢を選んだら、完全に結果のセリフが逆になってたと判明しました）

　それから、自分好みの選択肢を選んでも基本ストーリーや好感度に差し支えないというシステムや、攻略キャラが差し入れしたものを飾ったり使ってくれるなどの、主人公や攻略キャラに自己投影なり愛着をわかせるようなゲームのシステムはよかった……と思うものの。マルチエンディングのため、結局リセット、最初からプレイしなければならなかったり、そうするとスチルやイベント回想などは残るものの、やりとりしたメッセージが残らなかったり……と、メッセージの返信がリアルタイムで待たないといけないのもあって、なかなかの長時間、それなりに感情移入したプレイをしただけに、消さないといけないのが結構苦痛で。

　さらにそうまでして時間をかけて、おまけに自分なら選ばないような選択肢を無理やり選んで……まで見たエンディングが、人を選ぶ感じだったり、雑さを感じたりで、それこそ嫌なのを我慢してこれだけやったのに……と不満がたまってしまい。……このシステムでこの分岐タイプのマルチエンディング、あってないんじゃ？どうしてもやるなら、せめてハルト編アオイ編でエンディングの種類分、それぞれ３つはセーブ作れるようにしないといけないのでは……？と思いました。

　グラフィックは美しく、全体の雰囲気は好きですし、攻略キャラ以外のシナリオや、攻略キャラもメインでないサブやおまけ的な課金シナリオなんかはおおむね問題なく楽しく読めて。グラフィックがとにかく大好き、とか声優さんのファンの人なら、それだけでもありかな……とは思いましたが。メインシナリオを重視する身としては、さすがに移植という修正の機会があったにもかかわらず、矛盾を放置してるものを人にすすめる気にはなれないな……と思ったのでこの評価で。

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