いだいたもの

　むかしむかし。
　この国には竜の神様がいました。

　竜の神様は、世界にあふれる命の力をその身に受け、強く雄々しく空を駆け。
　時にはその力をふるい、襲いくる敵をはねのけて。
　そして受けた命の力を、自分の身体を通して世界へと返すことで、風を起こし、大地を癒やし、緑や作物を育んで。
　……竜の神様のおかげで、この国には、命の力が満ちていたのです。

　そうして時は流れ、いずれ竜の神様は寿命を終えて。
　残った命の力を、世界へ返して力に満たし。
　その身体は役目を終えたもの、そのすべてが行くという『はじまりの地』へと帰っていき。
　またいつか、新たなる竜の神様が生まれ、強く強く、命の力を巡らせる……その、繰り返しでした。

　けれど、あるとき。そうやって生まれた竜の神様は……とてもとても、弱っていました。
　……いろんな理由がたくさんあって、世界にあふれていたはずの命の力がとても弱り……ほとんど、竜の神様まで届かなくなっていたからです。
　空を駆けることも、力をふるうことも、前の竜のようにはうまくも、長くもいかず。
　いつもどこかが痛み、重く、苦しくて。
　大丈夫、平気だと周りと自分に言い聞かせ。
　それでも眠ると、苦しい、助けて、とうなされて……見ている周りが、心をいためる日々でした。

　……けれど、竜の神様は幸せでした。
　なぜなら、竜の神様には……大切な友だちがいたからです。

　くだらない、ささいなことで大きく笑い、怒り、泣くような。
　許される、できるなら、いつまでも話していたいような。
　いろんな気持ちを共有できる、楽しいことが何倍にもなって、共にいるときは、苦しみからも解放されて。
　つらさを抱えていたとしても、生まれてきたことに意味を感じさせてくれる……そんな、大切な友だちが。

　……けれど、あるとき。
　その友だちは、急に来なくなってしまいました。

　今日は来ないのかな、忙しいのかな。
　それとも、他に大切な人ができたのかな。
　……紹介してくれればいいのに。何も邪魔なんてしないから。
　せめて、ほんの少し、顔だけでも見せに来てくれたって……そう思って、何日も何日も待ち続けましたが……いつまでたっても、友だちは、その姿すら見せなくなってしまったのです。

　……そして、竜の神様は気がつきました。
　自分の体がずいぶん楽に……友だちがいなくとも、体が苦しくない……元気に、なっていることに。

　はじめは周りとともに喜び、はしゃぎ、動き、空を飛びまわっていましたが、その喜びもつかの間でした。
　……自分がこんなにも元気になったと言うのに……それを一番見てほしい、喜んでほしかった友だちが……いつまでたっても、どんなにあたりをさがしまわっても、姿を見せなかったからです。
　仮に自分が何かをして、嫌われてしまったのだとしても。
　だとしても、いくらなんでも、おかしすぎる、そう思った竜の神様は、強く、周りを問い詰めました。
　……そして、知ってしまったのです。

　友だちが、自分を生かすために……魔法をつかって『守り人』に――ほとんど意思や意識のない、人形や柱のような存在になることとひきかえに……自分に、命の力を届けてくれる存在になったことを。
　……そして、その力をなくしては、もはや自分の命がもたないことを。

　竜の神様は、ただ悲しむことしかできませんでした……。

　……そして、長い時が流れ。
　竜の神様には、新しい友だちができました。

　心を許し、共に笑い、つかの間でも、楽しい時間を過ごせる友だちが。
　……けれどまた、その友だちは突然に姿を消し――再び、同じことが起きたのです。

　――新しい『守り人』が生まれ、深い悲しみと引きかえに、また命を救われて。

　そんなことをまた、次もまた繰り返し。
　……竜の神様の悲しみは、もはや耐えがたいものになっていました。

　……そして、竜の神様と同じように。
　深い深い悲しみを、心の痛み、苦しみを抱えた者たちがいました。

　その者たちとは『アースマイト』の一族。

　生まれつき、大地に眠る、世界を巡る命の力を、強く強く引き出す力を持っていて。
　そのために、常人には使えない、さまざまな魔法や秘術を使え。
　そしてさらに研究を重ね、新たな秘術を生み出す……竜の神様を救うためと、他でもない竜の神様の大切な友だち、その本人に頼まれて。
　……研究の末『守り人』を生み出した、一族でした。

　……アースマイトであり、竜の神様と心を深く通わせた者のみがなれる存在、それが『守り人』。
　……国のため、世界のため。
　その命を救われるたび、竜の神様は――大切な友を失う。

　そして守り人を生み出した、彼らにとっても。
　守り人となった人は……家族であり、仲間であり。
　たとえ本人が心から望んでいると知っていても、できるなら、本当なら、失くしたくはない――大切な、人でした。

　……もう二度と、こんな悲しみを生み出したくはない。
　今は無理だと、見つからないとしても。
　新しい方法を、誰も悲しまなくてすむ方法を。
　絶対に諦めない、諦めたくない――そう強く、心に誓い。

　思いを胸に、時をまたぎ、世代を越えて。
　最初の守り人が、生み出されてから数百年。
　長い長い時をかけ、その間も心かなわず、何人もを『守り人』にして――とうとう、その方法を見つけたのです。

　……命を終えた者たちがたどりつく、命の力の根源、命の力にあふれた場所『はじまりの地』。
　生きながらにしてその地へとたどりつき、長い時間をかけて、そこにある命の力を、強く強く結びつけ。
　結晶にしたそのかたまりを、これまでに……そのために生み出した魔法を使って、竜の神様と一つにすれば――『守り人』を解放しても、竜の神様の命を救うことができる。

　もう誰も……『守り人』も。その大切な人たちも、竜の神様も。
　誰も犠牲にしなくていい――悲しませなくても、よいのだと。

　そうして『はじまりの地』にたどりつき。
　繰り返し繰り返し、ただただ繰り返し、ひたすらに、長い、長い時間をかけて。
　およそ百年もの時をかけ、とうとうそれを現実にした――竜の神様を救うほどの力を秘めた、命の力の結晶を手にした一族の末裔たちは……その結晶を、届けることになりました。

　皆で『はじまりの地』を抜け、他に入れる者がいないよう、扉を閉じて。
　途中、力の結晶を他の者に奪われぬよう、戦いの訓練をし、国の王様の許可を得て。

　……たとえ誰かが思い叶わずとも、誰か一人は。
　たった一人、それだけでも、竜の神様のもとにたどりつけるよう……悲しみを、長い長い使命を終わらせられるよう、皆でかたく、誓いを立てて。

　力の結晶と誓いを抱き、一族の末裔たちは、それぞれ竜の神様のもとへと向かったのでした……。

to　be　continued　Rune　Factory4

（以下コメントにつき薄字。読みたい方はマウスでドラッグ、もしくはこのあたりをクリック後、Ctrl+Aなどで反転してください。）

　メインストーリーおよびクリア後のストーリーからゲーム開始以前の設定を、自分なりにざっくりとまとめたものです。

　女主人公プレイだったのですが、クリア後のストーリー、ほぼ最後に出てくるアースマイトの末裔と名乗る男性の正体が自分にはよくわからなかったので、なんとなく別動隊もいたのかな、OPで訓練とか言ってたし、末裔とは言っても、主人公一人のみってことはないよね？と最後あたりはこんな感じにしました。

　男主人公プレイで同じなら「記憶を失う以前の男主人公」かなーとは思ったものの、女主人公だったので、いや記憶を失ったからって人格はともかく、性別が変わるわけもないし……ゼークス帝国がアースマイトや力の結晶ことルーンスフィアにくわしいことを考えると、別に捕まってしまったり、途中で倒れてしまったアースマイトの末裔がいる可能性もあるよなー……と思ったので。

　兄弟なり親戚なりとか、もしくはルーンスフィアがドラゴンボールみたいにOPのあれこれで割れて散らばった……？とかいろいろ想像しましたし、たぶんそのあたりはプレイヤーの想像の自由でいいんだろうなとは思うのですが、自分が書く分にはごちゃごちゃしないでシンプルな方が好きなので、このように。

　このシリーズ自体プレイが４のみ、資料的なものが基本ゲーム本編・セリフのみなので、前作や攻略本その他で何かしらの設定があったり、矛盾していたらすみません。

　思い付きみたいなものですが、少しでも楽しんでいただければうれしいです。