こんなドラクエは嫌だ

　（竜王の城・魔物と勇者が対峙）

「ふっふっふ、勇者よ。かかったな」

「何の話だ」

「先ほどから回復呪文を使っていない……
　ここに来るまでの戦いで、
　おまえの魔力はつきかけている……違うか？」

「……だとしたら、なんだ」

「周りを見ろ。
　……明かりが消えかかっているだろう」

「…………」

「今まではおまえの唱えた魔法の光で
　この洞くつも外のごとく照らされていたが、
　その呪文の効果も間もなく、消える。

　さすれば、この洞くつは……この通路も当然、闇の中に落ちる。
　我々にとっては住み慣れ、見慣れた闇の世界だが……
　人の身のおまえにとっては、そうではあるまい？」

「……その前に、おまえを倒すさ」

「……仮にそれが可能だったとしても
　この通路が暗闇に落ちることには変わりない。

　人の身で、暗闇の中、我々魔物の動きをさとり、
　この迷宮を抜けるなど……できるわけもない。
　……そうだろう？」

（明かりが点滅し、消える）

「……ふふ、残念だったな、人の子の勇者よ。
　我々の……私の……勝ちだ！」

（突然新しく明かりがともる。
　驚き、そのまま攻撃を受け倒れる魔物）

「バ……バカな……一体……何故……。
　……そ、その手にあるものは……！？」

「……懐中電灯だ」

こんなドラクエは嫌だ

-THE END-