こんなドラクエは嫌だ２

（竜王の城・戦闘中）

「ふはははは！　ロトの勇者よ！
　もう終わりか！？」

「…………」

「その手足では、剣を握れたところでふるうことはできず、
　はいずることはできても逃げることはできまい！

　薬草もつき、残るはたいまつひとつ！
　もはや、手はあるまい？」

「…………くっ」

「おおっとお、それでもまだあがくか、
　愚かな……いや、哀れと言うべきか。
　はいずったところで、逃げられぬとわざわざ教えてやったのに。

　そのような低く細い壁のすきまに逃げ込んだところで
　何が変わるというのだ？
　……言葉が理解できぬとは、哀れなことよ」

「うう……ぐあっ！」

「ああ〜すまないな〜見えなかったんだ〜
　そこに足があるなんて。

　おまえがあまりにもちっぽけだから、
　つい虫けらと同じように
　気をはらうのを忘れてしまってなあ〜」

「ぐっ
　くうっ……」

「おや、そんなにも苦しいか。
　……それでもまだ逃げようと
　すきまに入り身を縮めるか、かわいそうに。

　……そろそろ楽にしてやろうか。
　おまえをこのツメでひきさき、
　その絶望に満ちたはらわたを食い尽くしてくれようぞ！」

「……『ギラ』！」

「……！
　……なんだ、それは、最後っ屁のつもりか？

　その程度の火力で、ギラの上位呪文のベギラマですら
　耐えうる私の身体に、傷をつけられるとでも思ったのか？

　その穴からひきずりだされる時、
　私の頭と手がそこに向けられた瞬間を
　ねらっていたのだとしたら、残念だったな。

　……さあ、そろそろとどめと行こうか！」

「……くっ……」

「……？」

「くくく……」

「なんだ、何がおかしい！」

「……気づいてないのか？
　何故こんなにせまい穴にまで、
　俺がはって来たのか、

　なぜ、この明るい部屋で
　ずっとたいまつを持ち続けていたのか……」

「なに！？　なんだ、この炎は！！」

「…一人旅と言うのは、なかなかに手間でな。
　いつでも都合のいい場所に街や武器屋があるとも、
　火種やたきぎがあるとも限らない。

　だから、常に油を持ち歩いているのさ……
　袋や布に……時には、たいまつに染み込ませてな。

　……ここまではいずりながら、俺は床に油をまいていたのさ。
　血の色と匂いで気づかれないようにしながら、存分に。

　……注意深くしていれば、気がついたはずだぜ。

　やけに血がすべることに、血の他にただよう、油の匂いに。
　……もっともお前は、俺をいたぶることに夢中になっていたようだがな。

　おかげで、この穴に手を伸ばそうとして伏せるお前の頭と腹全体に、
　油をぬりつけることができたわけさ。

　……たとえ体内で炎を操る竜といえども、ベギラマで傷がつくのは実証済みだ。
　……これだけの火力に耐えられるはずがない。

　……燃え尽きろ、竜王！」

「ＧＹＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡーーー！！」

こんなドラクエは嫌だ２

-THE END-