誇りと名誉と
(「かえるの絵本スキーに30の御題」作品)

　誇りと名誉。
　それが一番大事なことだと、騎士団では常々そう言われてきた。

　確かに、それはとても大事なことなのだろう。
　けれど……本当の名誉とは、果たしてなんなのだろうか？
　……その疑問は、常に胸の内にあった。

　身分高きお方を悪漢から命を賭して守ること。それは確かに名誉だろう。
　けれどそれと、弱き町民を命を賭して守ることと、果たしてどれほどの違いがあるのだろう。

　力をみがくのは、力を持った悪しき者から、身をもって、他者を守るためで。
　たとえその他者がどんなものであろうと、その精神に、高きも低きもあるはずがない。
　なのに何故、身分高きものが優先されるのだろう。何故、率先して弱き町民を守ることが、許されないのだろう？

　かつては、その疑問が、常に胸にうずまいていた。
　しかし今は、疑問はない。

　……その疑問を確信に変えてくれた、弱き者を守ること、それが正しいと、肯定してくれた、そんな仲間がいるから。


　仲間の姿を目に浮かべながら、早朝、いつもの素振りをしていると、教官がデューイに声をかけた。

　おまえの槍裁きは、最近いっそう鋭くなったな、何かいいことでもあったか、と。

　デューイは迷わず、ええ、と答えた。

(from.騎士としての誓い)

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かえるの絵本スキーに30の御題