大切な友達
(「かえるの絵本スキーに30の御題」作品)

　天気のいい、秋の朝。
　酒場の二階の、二人部屋で。
　窓際で、涼やかな朝の空気を吸ったかえるは、共に暮らす友だちの目覚めが、いつもより遅いのに気がついた。

　少し寒くなったし、長い冒険の後だからかな、そう思いながらも、かえるは友だちの枕元に飛び移り、朝だよ、と声をかける。

　その声でぱちり、とまぶたを開けた友だちは、無言で起き上がると、旅道具の中から、一本の剣を手に取った。

　……およそ二ヶ月前に、白い鎧の剣士にもらったという、大ぶりの片手剣。
　かえるの友だちは寝間着のまま、剣をさやから抜いて、窓からさしこむ光の下、じっとその刀身を見つめている。

　その様子が気になって、かえるがどうしたのかと尋ねると、友だちは剣から目をはなす。

　そして、視線をかえるに向けると、たった今、不思議な夢を見ていたこと、その夢の中で、自分の友だちが、これとそっくりな剣を持っていたことを語った。

　――まだわからないけれど、
　　　もしかしたらあの夢は本当にあったこと……
　　　なくした記憶のかけらかもしれない。

　そう言って友だちは、再び抜き身の剣に、目線を移す。

　かえるはその言葉を聞き、きっとそうケロ、よかったケロ、と喜んだ。

　その言葉を聞いた友だちは、一瞬目を見開いて。
　それから目を細め、小さくうなずいた。

　そして剣をさやにしまうと、友だちはかえるに、一つ礼を言った。

　――いつも、ありがとう。

　かえるは少し照れて、友だちだから当たり前ケロ、そう答えた。

(from.バレンシアに勇者ありき)

19:最高の武器を読む

21:魔法学院の休日を読む

かえるの絵本スキーに30の御題